2018年10月の読書まとめ

2018年10月の読書メーター
読んだ本の数:40冊
読んだページ数:10648ページ
ナイス数:2068ナイス

https://bookmeter.com/users/584290/summary/monthly
■玉依姫 八咫烏シリーズ5 (文春文庫)
烏たちの住む世界「山内」の物語は、ほんの前座であったのだということに気づかされた巻。女子高生だった志帆が山神の「母親」となるため生贄とされ、やがて本当の「母親」としての役割に目覚めていく。しかし、その目覚めは果たして彼女自身の意思でなされたものだったのか、と聞かれると、一概に断定した答は出せない。わたし自身、「本当に自分の意思で自分の人生を選んでいたのだろうか」と不安になる。だが、結局のところ選んだからにはそれを全うせねばならず、やりきる以外に道はない。次巻はどのような切り口で物語が紡がれるのだろう。
読了日:10月31日 著者:阿部 智里
https://bookmeter.com/books/12757424

■不老不死の日
「不老だが不死ではないヴァンパイアと不死だが不老ではないゾンビ。両方を兼ね備えるなら幸せになれるのでは?」シュールでコミカルだが、抱擁を交わし合い噛みつき合うヴァンパイアとゾンビを映像で見たら、さぞ圧巻だろうなと思う。不老不死、概念としては憧れるが実際にそうなったら人生に飽きてしまいそうだ。でもどうだろう、もてあますような長い時間のなかで、読書し続けるのも悪くないような気もする(脳が老化しないなら楽しめそう)。もう少し考えてみます。
読了日:10月31日 著者:木下 まさき
https://bookmeter.com/books/13160480

■十月の旅人 (ハヤカワ文庫SF)
10月中に読みたかったので、予定を繰り上げて。特に印象に残っているのは『十月のゲーム』。冬は外に出かけられないし、気分も鬱屈とする季節。10月はその始まり。そんなメランコリックな主人公の心情をそのまま映し出したかのように、物語のトーンはひたすら暗く、不気味で、居心地が悪い。だが、なぜかこの世界観からは抜け出せない魅力がある。そのほか『昼下がりの死』、『永遠の地球』が気に入っている。SFと幻想小説のあいだを行き来する作風に賛否両論あったそうだが、ノスタルジックな哀切と余韻は唯一無二のものではないだろうか。
読了日:10月30日 著者:レイ・ブラッドベリ
https://bookmeter.com/books/10876564

■([も]3-1) 恋文の技術 (ポプラ文庫)
大学院生、守田の書簡集体小説。恋に狂った友人の世話をやいたり、家庭教師時代の教え子の成長を見守ったり、小説家・森見登美彦に恋文の技術の教えを乞うたり。とにかく森見節炸裂。へなちょこで情けなく、格好をつけようとして失敗する男性を書かせたら、著者の右に出る人はいないのではないだろうか。手紙を書かなくなって久しいが、思いのたけを伝えなければと焦ったり、態よく文章を凝らそうとすると失敗するという感覚はよく分かる。なにごとにも「教訓を求めてはいけない」。読書の技術の一つであると思う。
読了日:10月29日 著者:森見 登美彦
https://bookmeter.com/books/3030088

■斜陽 (新潮文庫)
本編を読んだことはなくとも、名台詞の数々はどこかしらで目にしたことがある。『人間失格』の「恥の多い人生……」しかり、太宰が持つ印象に残るフレーズを作る力は凄まじい。運命に抗う者、運命を背負ったまま毅然と死んでいく者、それぞれの斜陽には美学が映し出されている。デカダンス文学に格別の思い入れがあるわけではないのだが、どうしても結末から目を離せないのは、そこに作者の、あるいはキャラクターの人生哲学が秘められているからであり、わたし自身とは異なる価値観を知り、新たな世界の見え方を教えてもらえるからなのだと思う。
読了日:10月28日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/569528

■7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(1) (ヤンマガKCスペシャル)
新章。人生を賭け、ロンドンへやってきたランスとワース。作品を売り込み上演してくれる一座を探してみるものの、リヴァプールとロンドンでは流行りも流儀も異なる。自信があっただけに落ち込むランスだが、あらたな出会いによってその手腕は次第に洗練されていく。当時の本一冊が車一台と同じ価値を持つというのには驚かされた。学問ができるというのは、それだけで得がたい幸福であり幸運であるということなのだろう。さらに進化を続ける「シェイクスピア」。果たしてどの一座が彼の脚本を買うのか。
読了日:10月27日 著者:ハロルド 作石
https://bookmeter.com/books/11601537

■車輪の下 (新潮文庫)
(再読)高校生のころ、ヘッセは何作か挑戦したことがあったが、少年の終わりないメランコリックな心情描写に、いまひとつはまれなかった思い出がある。いま改めて読むと、それ以上に絵画的で美しい風景描写に心惹かれた。大人たちの期待を一身に背負った少年が、自らの希望や欲求に気づき、敷かれたレールを外れて生きたいと願う。一人の人間ならば当然のことだし、かつて少年だった大人たちもまた、同じような経験があるのではないか。読みながらわたし自身が大人に対して抱いた反骨心を思い出し、それを決して忘れてはならないと自戒した。
読了日:10月27日 著者:ヘルマン ヘッセ
https://bookmeter.com/books/573185

■階段を下りる女 (新潮クレスト・ブックス)
ある一枚の絵画と、そのモデルとなった女をめぐる三人の男。絵画に狂わされたのか、それともその女に狂わされたのか、いずれにせよ男たちの生活は混乱を来たしてしまう。回想を終え、再会を果たした主人公と女は互いに歳をとっているはずだが、女のほうに関しては、なぜか小説内で描写される「階段を下りる女」の絵から想像した、若い女性像のままでしかイメージできなかった。時が流れても出会った当時のまま、内面は絵画のように時を止めているのだろうか。絵の中(物語の中)ではなく、額縁の外から彼らを眺めていたような読後感。
読了日:10月26日 著者:ベルンハルト シュリンク
https://bookmeter.com/books/11918566

■都の子 (集英社文庫)
今年の夏ごろから、読んでいる本の気になった文章や見慣れない言葉遣いを写真に撮っておいて、後でノートに書き写す、ということをしているのだが、本書はどこを読んでもスクラップしようという気持ちにならなかった。全ての文章、情景が、美しくて特別で、どこか一部分だけを取り出してしまうのはもったいない気がしたのだ。著者の切り取るものものは大抵さり気なく、わたしなどは気にも留めないようなものばかりなのだが、そんなものにも確かに魂が存在し、慈しむべき愛嬌がある。もっと無垢な眸で世界を見渡したいと思わされるエッセイ集。
読了日:10月25日 著者:江國 香織
https://bookmeter.com/books/578300

■月のこども
遠い未来の月と地球。今でさえ遥か昔に比べたら、大気は汚れ環境は荒れ果てているのだろうが、このままいけばこのショートショートのようなことになっていないとも限らない。そして、その流れを食い止めることのできない哀しさは、古今東西、共通している。
読了日:10月24日 著者:木下 まさき
https://bookmeter.com/books/13175487

■7人のシェイクスピア 6 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
生まれながらにして運命付けられた身分から脱出しきることはできないと、権力を前にして叩きつけられたシェイクスピア。父親が大金をはたいてまで得ようとした地位、名誉、金は単にそれだけにとどまらず、その中には確かに「自由」があったのだと(父親自身が自覚していたかは謎だが)気づく。父親が叶えられなかった夢をつかみ取ろうと誓う二人の青年と月の輝きが印象的。ふと思い出したのだが、英語の慣用句で「月を掴む」というのがあるが、意訳すると「無い物ねだり」…。果たして二人の行く末は。次巻より新シリーズが始まる。
読了日:10月24日 著者:ハロルド 作石
https://bookmeter.com/books/4551201

■ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈下〉 (新潮文庫)
この結末にはさぞ賛否両論あっただろうなと、本を閉じながら思った。わたし個人の感想としては「さもあらん」といったところである。さまざまな作家が書いているが、永遠に憧れるもの、求めてやまないものというものは、手に触れようとした瞬間に消えうせてしまうし、旅の終わりは最初の場所に回帰するものだ。しかし完全に放り投げられてしまうのではなく、確かな救済も存在する。別の世界に生まれなおした彼らは、果たしてどんな未来を生きるのだろう。そしていつの日か、ローランドは旅の終わりを迎えることができるのだろうか。
読了日:10月23日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/508490

■ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈中〉 (新潮文庫)
エディとジェイクの死。このような終わり方で、むしろ良かったのかもしれない。裏切りや不信が原因で仲間が離れてしまうよりは、自らが課された仕事を行っているさなかに命を落とすのは、天命を全うしたと喜ぶべきなのかもしれない。反対に、物語のなかのキングは「やるべきことをやらなかった、代償として二人の命が失われたのだ」と弾劾されている。本シリーズは、キング自身の長い断筆期間を置いて再び描き出された作品だ。本作の進行が滞っているあいだの焦燥や危機感を、そのまま物語に組み込んだのだろうか。次巻、完結。
読了日:10月23日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521338

■ダーク・タワー〈7〉暗黒の塔〈上〉 (新潮文庫)
最終章の始まり。急になじみのないキャラクターがどんどん登場するうえに、あれだけ強敵であったウォルターがあっけなく退場するなど、やや肩透かしの感も否めないが、これから盛り上がっていくのだろうか(そうであってくれないと困るが)。ただ確かなのは、このさき<カ・テット>を待ち受けているであろう試練が、生死に関わるほど厳しく過酷なものであろうということだ。完結へ向けて中巻へ。
読了日:10月21日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521337

■月に願いを
死神の粋な計らい。夢であえるのは嬉しい。わたしは、昔よく遊んでいた子をたまに夢で見る。いまでは年賀状を交換するだけの関係で(それも毎年ではない)、結婚してるのか、仕事は何をしているのか、それすらも知らないが、時おり思い出しては優しい気持ちになる。いつか寂しさが消えて、懐かしい記憶だけになったとしても、その存在が自分の人生の一部を作り上げてくれたことさえ覚えていられれば、わたしは幸福だと思う。
読了日:10月20日 著者:神家 正成
https://bookmeter.com/books/13175878

■津軽 (新潮文庫)
太宰の故郷、津軽に関する紀行文。太宰の津軽に対する愛着と、人々との和やかなふれあいが悠々と描かれており、楽しみながら執筆していたのだろうなと感じた。同時に、こんなに愛されている人も、自ら命を絶つ決断をするのかと寂しい気持ちになる。実を言うと、わたしも津軽の出である。だがあいにく太宰ほどの故郷愛はなく、「津軽はこんなに素晴らしいのだ」と熱く語る姿勢に圧倒されてしまった。自分の出身地を愛する人ならば、「日本全国、どこを捜しても見つからぬ特異の見事な伝統があるはずである」という思いは共通するのではないだろうか。
読了日:10月20日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/572914

■変身 (新潮文庫)
不条理小説と名高いが、主人公が前触れなく虫になってしまったこと以外はいたって地に足の着いた物語だと感じる。父親にリンゴをぶつけられ、あげく死んでしまった主人公は哀れ以外のなにものでもないが、物語を妹や両親の視点で見てみると、完全にハッピーエンドである。彼の死によって家族は久しぶりに外出し、妹の活気付いた美しさを発見し、結婚の準備を始める。家族にとって、主人公はずっと家に巣食っていた障害であり、悩みの種であった。清清しいラストであるだけに、なんとも気が重い。わたし自身が誰かの虫である可能性を否定しきれない。
読了日:10月19日 著者:フランツ・カフカ
https://bookmeter.com/books/569439

■葬儀を終えて (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」クリスティは読者をひきつけるフレーズを考え出すのが本当に上手い。なぜ彼女はそのような発言をしたのか、その真意は一体なんなのか。本当にリチャードは殺されてしまったのか、あるいは病死だったのか。葬儀に集まった親族たちと共に、読者は思いをめぐらせ、物語進行に釘付けになってしまう。死によって生まれた遺産相続をめぐる骨肉の争いを、死んだリチャードが知ったらどう思うだろう。事件によって暴かれていく人間の本性と、そこから生まれ出るドラマはやはり極上。
読了日:10月18日 著者:アガサ・クリスティー
https://bookmeter.com/books/547227

■Fate/Grand Order-turas realta-(3) (講談社コミックス)
なぜフランスに特異点が生まれたのか。フランスで起こった革命は、人間社会を大きく進歩させた、いわば時代の転換期である。そのような重要な出来事の土台であるからこそ歪みが生まれたのであろう。本シリーズの醍醐味のひとつには、歴史上の人物が英霊として第二の人生を経験した際、どのような選択をするのかを見届けることにある。サンソンが贖罪を求め、マリーが人民を守ることを選ぶ、という想像にはわたしも共感した。アマデウスの「恋ではないが愛ではある」という言葉が染み入る。
読了日:10月17日 著者:カワグチ タケシ
https://bookmeter.com/books/13114130

■月は見ていた
ロマンチックなラブストーリーかと思っていたら、まさかのSF(でも、かぐや姫もSFですよね)。互いに地球人をサンプリングしたかったのに、実は……。これがきっかけで二人が真剣に惹かれあったりしたら、それはそれで面白いなと思う。
読了日:10月17日 著者:谷口 雅美
https://bookmeter.com/books/13175813

■月は幽咽のデバイス (講談社文庫)
本シリーズ、ひいては作者のミステリ群は理系の推理物と名高く、事件の背景やトリック、物語を支える細々としたパーツには実際にそのようなものが扱われているが、ことVシリーズに関してはどうしてもキャラ読みを優先してしまう。特に紅子、元夫の林、祖父江の微妙な三角関係は、彼らのうちだれか二人が絡むともうドロドロしてしまって事件どころではなくなってしまう。たしかに愛は介在しているのだろうが、それ以上のなにか重く複雑なものがあるように思えてならない。彼らはそれぞれ関わるのをやめたほうが幸せになれるのではないだろうか。
読了日:10月16日 著者:森 博嗣
https://bookmeter.com/books/566923

■ダーク・タワー〈6〉スザンナの歌〈下〉 (新潮文庫)
スザンナの出産による、その後の流れが自分の想像とまるで違い、先を急いで読んでみたら結論はまたもやお預け。本巻の見所は、やはりキング自身が物語のなかに登場した部分だろうか。エピック・ファンタジーである『ダーク・タワー』のあらすじを失ったため続きが書けなくなった彼の前に、エディとローランドが現れる。凄まじいメタファーとキングの「精神がイカレたのか?」という台詞につい笑みが漏れた。彼自身の人生における大事件と物語が交錯するさまに、いかにこの作品が彼にとって重要なものなのか、実感を持てた気がする。
読了日:10月15日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521336

■ダーク・タワー〈6〉スザンナの歌〈上〉 (新潮文庫)
マイアとデッタが主導権を取ったり取られたりするなか、スザンナが協力的なのは本能的な母性がそうさせているからなのだろうか。身ごもっている子供の父親の正体が意外。事実をエディが知ったらなんとも複雑な状況になりそうであるし、それこそ<カ・テット>は危機に陥りそうである。子供の命名もなかなか唸らせる。これまで歴代のガンスリンガーに対する叛逆、そして父殺しになるための子供。だからこそ名前はモルドレッド。なんにせよ、生まれてくる子供はあらゆるものを破壊しそうだ。下巻へつづく。
読了日:10月15日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521335

■7人のシェイクスピア 5 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
旧教徒の司祭狩りに遭い、シェイクスピアたちを長年支えていたコタムは捕らえられ、永遠に別れてしまった。そのさなか、結婚できない相手との間にできた子どもの妊娠をごまかすため、お前の子だと偽られ、望まない結婚を強いられたシェイクスピア。生まれた子は新教徒として育てるという妻との関係に悩むシェイクスピアに、新たな困難が降りかかる。宗教によって生まれた苦痛は、宗教でしか癒すことができないのだろうか。熱心な信仰心のないわたしには非常に興味深い価値観である。
読了日:10月13日 著者:ハロルド作石
https://bookmeter.com/books/4258696

■人間失格【新潮文庫】 (新潮文庫 (た-2-5))
生きづらさ、人の営みに溶け込めない不安を抱える、ある手記を書いた人物の半生。酒や薬、女に溺れ、人生に困惑する主人公。繊細な人ほどより共感するだろうなと思う。わたしも10代のうちにこの作品を読んでいたら、どっぷり嵌っていたかもしれない。主人公の内面についてより興味を引かれたのは、女性の底知れなさに怯えながらも無縁ではいられないという、不思議なアンビバレンツを抱えている様子だ。そのアンビバレンツから抜け出せたなら、彼の人生はもうすこし明るく穏やかなものであったのかもしれない。
読了日:10月13日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/576878

■三文オペラ (岩波文庫)
飢え、貧困、道徳の欠如、社会にあるさまざまなひずみを面白おかしく歌い上げた喜劇だそうだが、わたしには登場人物たちが世の中を笑い飛ばそうとするたびに、悲壮感のほうをより強く感じてしまった。ヒモの歌などはあまりにもあけすけ過ぎて、読んでいると身体が冷たくなる。だからこそラストの、まるで壮大な物語が満を持してハッピーエンドを迎えたかのような仰々しさにはあっけにとられるが、むしろそれこそが本作の真骨頂であり真髄なのかもしれない。喜劇を通り越した茶番。
読了日:10月12日 著者:ベルトルト・ブレヒト,岩淵 達治
https://bookmeter.com/books/22996

■使いみちのない風景 (中公文庫)
村上春樹が旅について思うことを綴った文章と、稲越巧の写真がおさめられた一冊。わたしも村上氏と同じく定着型の人間だ。違うのは、自分に似つかわしい場所を捜し求めて住居を変えるのではなく、環境に自分の生活スタイルを合わせていくということ。使いみちのない風景は、わたしも持っている。それに対して特別な感情はなく、ただ、思いだすだけ。だが、「使いみちのない風景」という名前がつくと、これまで特段意識してこなかったものが、急にかけがえのないもののように感じられるから不思議だ。
読了日:10月11日 著者:村上 春樹
https://bookmeter.com/books/493517

■7人のシェイクスピア 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
宗教の対立で、国王が変わるたび宗教体制が変わり、揺れ動くイングランド。そんな中でシェイクスピアとジョン・クームは生まれ、出会った。身分を金で買える時代、金儲けに明け暮れ、家庭を顧みない父によって家は没落していくが、シェイクスピアはまっすぐな信仰心と人を惹きつける魅力を備えながら成長していく。ハムレット家の娘とのエピソードは印象深い。若い彼らの身の上に起こる失恋、喪失、そして深い罪悪感。それらが将来、作品のベースとなるようだ。
読了日:10月10日 著者:ハロルド 作石
https://bookmeter.com/books/3042039

■共に老いる
実家で飼っていた柴犬のことを思い出した。小学生のころ飼い始めた犬は、わたしが上京し、社会人になって数年経った年にふっと姿を消してしまった。帰省するたびによぼよぼとした風情を出していたので、もしかしたら死期を悟って、どこか違う場所で死を迎えたかったのかもしれない。ペットの飼い主に対する思いがけない情愛を見ると(それが人間のエゴを通して見た勘違いであったとしても)胸が痛くなる。わたしは彼にきちんと情愛を向けられていただろうかと問いかけたくなるのだ。
読了日:10月10日 著者:神家 正成
https://bookmeter.com/books/13158165

■ダーク・タワー〈5〉カーラの狼〈下〉 (新潮文庫)
ジェイクの成長と、人として丸みの出てきたローランド、そしてオイがどんどんかわいく賢くなっていく様子に微笑ましくなるが、女、子ども関係なく、容赦なしに命を落としていく展開には暗い気持ちにさせられた。スター・ウォーズやマーベルコミック、ハリー・ポッターなどさまざまなオマージュ(と言っていいのか)にニヤリとした。世界は入り混じり、混沌としている。マイアの人格はスザンナの身体をのっとったまま逃走。出産まで待ったなしの状態で、ローランドの判断はどうなるのだろうとハラハラしたが、次巻ではみんなでスザンナを追う模様。
読了日:10月09日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521334

■ダーク・タワー〈5〉カーラの狼〈中〉 (新潮文庫)
やや中弛みの感がする中巻。キャラハンの一人語りに終始するが、彼もまた重要な人物であるとの示唆を感じる。なぜならば、彼は序盤ですでに登場しており、彼らの<カ>に関わっていることが明らかになるからだ。これまでも危ない綱渡りをしてきた<カ・テット>だが、またもやその絆が壊れようという危機が訪れている。スザンナの出産はどうなるのか、人格は?と気にかかることはあるが、下巻での次なる展開を期待したい。
読了日:10月08日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521333

■ダーク・タワー〈5〉カーラの狼〈上〉 (新潮文庫)
前章でも匂わせていたが、スザンナの妊娠はどうやら確定してしまった模様。デッタ、オデッタに続き、第4の人格”マイア”を知らずに生み出したスザンナだが、ローランドとエディはその事実をどう伝えるべきか考えあぐねている。この「複数の人格」を生み出すスザンナの役割とはいったいなんであろう、としばしば考えるが、まだ答は出ていない(もしかしたら特段意味はないのかもしれないが)。このまま戦いに突入するのか、それともひと波乱挟むのか、中巻へ続く。
読了日:10月08日 著者:スティーヴン キング
https://bookmeter.com/books/521332

■るろうに剣心─明治剣客浪漫譚・北海道編─ 1 (ジャンプコミックス)
前作から6年、文明開化まっさかりの明治16年だが、どのような世界にも光があれば闇もある。飢えや貧困、格差社会によって出来た歪みの中で育まれた3人の若者を新たに加え、物語が再度始まった。死んだと思われていた薫の父親の足跡を追うため、北海道へ向かう剣心たち。すでにその地では戦いの気配が漂っている。時間の流れと共に登場人物たちはさまざまな生き方を選び、散り散りになってはいるが、また物語に登場してくれるようで楽しみである。以前から思っていたが、シリーズで一番の男前は弥彦。年とともに、また一段と大人になった。
読了日:10月06日 著者:和月 伸宏,黒碕 薫
https://bookmeter.com/books/13058559

■R75
心のなかに思い描いている自分の像と、世間的な自分の像が重ならないということは歳を重ねるごとに増していく。わたし自身、ほとんど二十歳くらいの気分なのに気がつけば……。けれど年代それぞれ、できること・楽しめることというものはあるはずで、波に乗ってみればなかなかどうしておもしろい、ということも増えるのではないだろうか。歳を経ること、重ねることにはどうせ抗えないのだから、せめて前向きでありたい。
読了日:10月06日 著者:谷口 雅美
https://bookmeter.com/books/13157289

■戯作三昧・一塊の土 (新潮文庫)
著者短編集。これまで読んできた短編集に比べると(蜘蛛の糸、地獄変、或阿呆の一生etc)さほどドン底気分には陥らないのでホッとした。『戯作三昧』『舞踏会』『あばばばば』などが気に入っている。『戯作三昧』の、作家が抱えるジレンマ、肥大した自意識に対する苦悩。また「勉強をしろ、癇癪を起こすな、もっと辛抱をしろ」と観音様からのお告げにジンと染み入る様子。ささやかな地獄からそっと掬い上げられるような救済が心地よかった。収録作品、いずれにしても生に対する真摯さが印象に残っている。
読了日:10月05日 著者:芥川 龍之介
https://bookmeter.com/books/560744

■ナナ (新潮文庫)
(再読)芝居も歌も上手いわけではないが、なぜか人を惹きつける魅力を持ったナナ。女優・高級娼婦として彼女に魅了される男たちは、財産を吸い尽くされ、果てには命まで落とす。しかしそうまでしても、ナナが本当にほしかったものを与えられる存在はいなかった。男たちが身を持ち崩すにいたった元凶はナナ本人に違いないのだが、なぜかナナを悪い女として弾劾する気持ちにはなれない。たったひとつの不自由こそが彼女にとって最大の不幸であり、また彼女のような立場の女性自体が、この時代における闇の部分であるからなのだろう。
読了日:10月04日 著者:ゾラ
https://bookmeter.com/books/487328

■銀河英雄伝説 11 (ヤングジャンプコミックス)
貴族たちで編成された軍とラインハルトの戦い。生まれて以来物事は願えば叶うものであった貴族たちにとって、戦勝もまたそのようなものに考えられているが、そういった時代は終わりを告げた。ラインハルトは次々と艦隊を撃破し、狂戦士オフレッサーを罠にはめることによって仲間に殺させる。オーベルシュタインの「正しさ」は残酷だ。その正しさが強く曲げようもないものであればあるほど仲間との溝になっていくのは痛ましい。
読了日:10月03日 著者:藤崎 竜
https://bookmeter.com/books/13108409

■スキップするように生きていきたい (MF comic essay)
山椒ぴりことその家族、周りの人々の緩やかな日常を描いている。ぴりことどっこいどっこいか、もしかしたらもっとダラけて生活しているわたしとしては、「このくらいのんびりしていても良いんだなあ」とホッとするというか、肩肘張らずに生きていくことの心安さを思い出させてもらえて嬉しかった。スキップは、最初はコツがいるけれど、上手く出来るようになるととても楽しい。
読了日:10月03日 著者:こやま こいこ
https://bookmeter.com/books/12427070

■テレビジョン (集英社文庫)
ある日「テレビを見るのをやめよう」と思い立った主人公の一夏。そこから何をするのだろうと見ていても、別段これといったできごとは起こらない。妻と息子が出かけているあいだ、上の階に住む夫婦たちに頼まれた植物の水やりをしたり、散歩をしたり、研究の続きをしたり。大きな起伏なく、まさに主人公が好む「平泳ぎ」の状態で飄々と時間が流れる。一見無意味なものごとがゆるゆると繰り広げられており、まさにそれこそがトゥーサンにとってのテレビ観なのだろうか。『浴室』『ムッシュー』などと比べると主人公が普通の人間のよう。
読了日:10月02日 著者:ジャン=フィリップ トゥーサン
https://bookmeter.com/books/368880

■ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)
シリーズ番外編。結婚して7年目の大輔と栞子。二人のあいだには、幼くしてすでに本が大好きな娘・扉子が誕生していた。本編は、興味津々の扉子にせがまれて本と古書にまつわる物語を栞子が語るという形で進行し、そのなかでおなじみの人物たちのその後の姿を垣間見ることができる。坂口夫婦は苦労しながらも、やはり幸せに生活しており、しのぶの天真爛漫な性格がまたひとつわだかまりを溶かす助けをしているようで何よりだった。扉子もまた将来は古書堂を継ぎ、本と人をめぐる物語に身を投じていくのだろうか。将来が楽しみである。
読了日:10月01日 著者:三上 延
https://bookmeter.com/books/13116164


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