投稿

7月, 2018の投稿を表示しています

生まれ変わること

わたしは多分、日々の変化や衝撃にとても鈍いのだと思う。たとえば夏バテするほど練習し、クラリネットで参加して勝ち取った吹奏楽コンクールの金賞だとか。就職が決まって、地元を離れることになった引越しの当日だとか。意外にも早く決まった結婚と、披露宴の夜だとか。 人生のなかでたびたび訪れるいささか大きなイベントも、なんとなく来ることを受け入れ、なんとなくこなし、なんとなく「終わったのだなあ」と見送る。 実際に只中にいるときはそれなりに緊張もしていたと思う。けれど、結局それは通過点でしかない。人生の岐路ではあるかもしれないけれど、岐路は岐路でしかなく、「人生が変わった!」という感動は薄い。だからとても、わたしは鈍いのだと思う。 けれど、出産で人生が変わった。その時も、ひと段落ついた時に振り返ってみても通過点のひとつであるという思いはあったけれど、いま改めて、この一年を通して考えてみると、出産はわたしの人生を変えた。 うちの人とは同じ会社で働いているけれど、勤務時間も帰宅時間もバラバラなので、夕飯を作っておくということはほとんどしなかった。どちらかが休みの日に、気が向いたら用意する程度。交際、同棲生活を含めて約7年ほど、そんな生活を続けていた。変化したのは子どもが生まれてから。離乳食が始まり、いろいろな食材を与えるためにいままで努めて買わなかったようなものを買うようになり、あまったものを自分たちで処理するためにレシピを探して料理するようになったのだ。気づけばいまや、我が家の食事のほとんどはわたしの作る料理で賄われている。 そもそもの話、わたしはあまり、子どもが好きではなかった。うちの人も。じゃあなぜ子どもを作ったのかと聞かれると困る。自然な成り行きでできたとしか言いようがない。無計画だと詰られるかもしれないけれど、でもそれが真実だった。戸惑いながらわたしは妊娠を受け入れた。笑ってしまうのだけれど、「人間って妊娠するんだな」というとても当たり前のことを妙に感心していたことを憶えている。 実際に産んでみたら、子どもはすごくかわいい。産む前からかわいかったけれど(不思議な感情だ)、そのかわいさは日に日に増している。そしてなんと、これがわたしにとって一番大きな変化なのだけれど、よその子どもすらかわいく感じるのだ。 子どもの何が苦手かというと、コントロールの効かなさが

2018年6月の読書まとめ

2018年6月の読書メーター 読んだ本の数:41冊 読んだページ数:10661ページ ナイス数:2530ナイス https://bookmeter.com/users/584290/summary/monthly ■父の日に来た娘 なんともダーク。父の日は父をねぎらう日だが、こちらは父がもうひと頑張りする話。騙された「父」と騙す「父」、心理的な葛藤を考えると両方ただの良い人ではないのだが、人の情の味わい深さの一端が垣間見える。そして、それをお膳立てする母もすごい。 読了日:06月30日 著者:誉田 龍一 https://bookmeter.com/books/12969863 ■アド・アストラ 11 ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ) ジスコーネとの戦い。カルタゴ・ノヴァに続いて、ここでも過去のハンニバルとの戦いで経験した戦術を真似し、マシニッサを捕虜とする。快進撃を続けるが、一方ではハンニバルに勝つため、戦術だけでなく心までもハンニバルになりきろうとするスキピオ。ローマ人にとって怪物のようなハンニバルだが、そのハンニバルもまた、ローマという怪物によって生み出された天才だ。負の連鎖ともいうべき二人の因縁だが、この決着がつくのもそれほど遠い未来ではない。 読了日:06月30日 著者:カガノ ミハチ https://bookmeter.com/books/11517977 ■抱擁、あるいはライスには塩を 下 (集英社文庫) 妙な言い方かもしれないが、この物語において桐叔父以上に死を迎えるにふさわしい人物はいない。一族のなかでもっとも自由で、ナイーブで、優しい人。直截的な伏線はないのにも関わらず、上巻の時点で彼が死んだら悲しいだろうという思いが自然と湧き、下巻で実際に死を迎えるとストンと腑に落ちるような気持ちになった。抱擁も、ライスには塩をという言葉もプライベートなもので、その崇高さが彼の死によってより極められている。紡がれていく歴史が終わりを迎えるそのときまで、反骨的な彼らは挑み続けるのだろう。ライスに塩を振るために。 読了日:06月29日 著者:江國 香織 https://bookmeter.com/books/7871670 ■抱擁、あるいはライスには塩を 上 (集英社文庫) 驚くほど反骨的な