2018年7月の読書まとめ

2018年7月の読書メーター
読んだ本の数:44冊
読んだページ数:11568ページ
ナイス数:2259ナイス

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■イサナのモリ(記念日にショートショートを)
ショートショートだが、長編小説の一部を読んでいるような感覚。海に生き、海に生かされる人々のシビアな戦いが1ページに凝縮されている。生ある限り続いていくその険しい道のりを前にしても、決して臆さないという覚悟と姿勢に背筋が伸びる。
読了日:07月31日 著者:行成 薫
https://i.bookmeter.com/books/13046785

■蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション (8) (角川ホラー文庫)
殺人者蜘蛛男と明智小五郎の戦い。物語の終盤まで明智の登場は待たされるが、そこに至るまでは決して退屈ではない。蜘蛛への恐怖はわたしも共感する。Gのつく虫と出会うまでは、蜘蛛が一番嫌いな虫だった。ベストセレクションを通して読んだ感想だが、乱歩の作品は二つに分けられる。一つは心躍る冒険活劇、もう一つは倒錯した性癖の世界。それらが融合したものもあるが、いずれにせよ、物語の中心には少年の姿が存在する。無邪気な好奇心とノスタルジーに、大人になったわたしもつられて幼き日に帰るのだ。
読了日:07月30日 著者:江戸川 乱歩
https://i.bookmeter.com/books/479185

■デイヴィッド・コパフィールド〈2〉 (新潮文庫)
叔母の援助によってふたたび生活に変化が訪れるデイヴィッド。スティアフォースやアグニス、個性豊かなキャラクターの登場に心躍るが、目を引くのはユライア・ヒープの存在。暗く冷ややかなものを湛えている彼の不気味さには、むしろ魅力的であるとも言える。花のような女の子たちに、すぐ惹かれてしまうデイヴィッドの素直さが微笑ましい。バーキスの最期は彼自身の人生の終焉であると共に、デイヴィッドの少年としての日々の終わりを感じさせられる。これから起こる波乱の予感に心ざわめかされつつ、次巻へ。
読了日:07月29日 著者:チャールズ ディケンズ
https://i.bookmeter.com/books/22208

■金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 (角川文庫)
京極夏彦の抜粋改稿掲載から始まり、各作家が書いた金田一耕助シリーズのパスティーシュが収録されている。雰囲気をよく模しているものからちょっと笑ってしまうようなもの、クロスオーバーなど多彩で面白い。北森鴻氏が亡くなっていることを、本書の著者紹介で知る。学生のころ一作だけだが読んだことがあり、印象に残っていただけに残念だ。『松竹梅』『愛の遠近法的倒錯』などが気に入っている。改めて横溝正史の創作が多くの作家に影響を与えていたことを知り、嬉しく思う。金田一シリーズは一通り読んでいるが、また読み返したくなった。
読了日:07月28日 著者:赤川 次郎,有栖川 有栖,小川 勝己,京極 夏彦,柴田 よしき,服部 まゆみ,菅 浩江,栗本 薫,北森 鴻
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■プリニウス7 (バンチコミックス45プレミアム)
ローマの大火。ネロが故意に火を放ったのではないかという噂が立つ中、何者かによって火事は計画され、人々は苦しめられる。自然災害が乱発する上に権力争いやその他のゴタゴタが重なって混迷を極めるが、実際にこの時代に生きていた人々もさぞ暗い気持ちになったことだろう。クーデター未遂と暗殺未遂が相次いでいることからも分かるように、求心力を失いつつあるネロの治世もそろそろ終焉を迎える。
読了日:07月27日 著者:ヤマザキマリ,とり・みき
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■鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
オースター『ニューヨーク三部作』の集大成。失踪した友人が残した著作を出版し、彼の妻と結婚し、子どもを養い、やがて彼の伝記を書くようになるが、姿を失っても友人の影はどこまでも主人公に濃厚に纏わりつく。人としては好きだけれど、一緒にいすぎると落ち着かなくなる相手というのはいる。だんだん好悪が分からなくなって、しまいには憎みはじめる。そのような葛藤は相手が問題なのではなく、自分自身のなかにある何かが原因なのだ。他者と自己の境界があいまいになっていく感覚には、恐ろしさと一種抗いがたい魅力が隣り合わせに存在する。
読了日:07月27日 著者:ポール・オースター
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■ローマ亡き後の地中海世界2: 海賊、そして海軍 (新潮文庫)
聖戦に次ぐ聖戦の時代。かたや「右手に剣、左手にコーラン」かたや「右手に剣、左手に聖書」。一神教と寛容は相容れず、二つの宗教は自らの正しさを証明するために他方を排斥する。イスラム側に囚われていた名もなき奴隷を解放するために設立され救出修道会、救出騎士団の話は面白かった。いまではドン・キホーテで有名なセルバンテスは、この当時「名もなき人」のひとりであり、救出の対象だった。もしこのとき救い出されなければ、後世の我々が彼の著作に親しむこともなかったのである(なお、私はドン・キホーテ未読。近いうちに読んでみたい)。
読了日:07月26日 著者:塩野 七生
https://i.bookmeter.com/books/8169187

■オリンピア・キュクロス 1 (ヤングジャンプコミックス)
『テルマエ・ロマエ』の作者が描くタイムスリップもの第二弾。『テルマエ・ロマエ』のモチーフを温泉からオリンピックに変えた、悪く言うと二番煎じに他ならないがなかなか面白い。村を守るため、憧れのアポロニアに近づくためにオリンピック(運動会)のあり方を模索する古代ギリシャ人デメトリオス。遠い未来の日本で目の当たりにする「みんなが楽しむ運動会」を持ち帰り、和気藹々と過ごすお決まりの話だが、コミカルでほのぼのとした作風につい笑いを誘われる。古代ギリシャ人にとって、運動は一つの哲学だったという話は興味深い。
読了日:07月25日 著者:ヤマザキ マリ
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■海の日なんて知らない
この短い年月に祝日の振り分けかたが随分変わったのだなと思う。今後も変わっていくようだが、覚えられそうにない。蘊蓄を語る人物に水を差された二人の鼻白んだ空気がなんとも言えない。
読了日:07月25日 著者:誉田リュウイチ
https://i.bookmeter.com/books/13047193

■エリザベス王女の家庭教師 (創元推理文庫)
シリーズ第2弾。チャーチル首相に見込まれたマギーはスパイへの道を歩み始めるが、前途多難。今回はエリザベス王女(現英女王)がサブキャラクターとして登場するが、その聡明さ、勇敢さがあまりにも生き生きと描かれているので、ヒロインであるマギーを霞ませているのにはつい苦笑してしまった。エリザベス女王が登場する作品は何度か読んだことがあるが、そちらの作品でも物語をぐいぐい引っ張っていく人物として描かれていたので興味深い。後半にかけて新たな秘密が明らかになり、シリーズがますます盛り上がっていくことを予感させられた。
読了日:07月24日 著者:スーザン・イーリア・マクニール
https://i.bookmeter.com/books/7975364

■孤島の鬼  江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫)
一人の女性と恋に落ちたことで詳らかにされる、ある家にまつわるおぞましい秘密。圧倒的な物語性と世界観には舌を巻いた。超常現象でもなんでもない、一介の人間の所業。だからこそ理解しがたい倒錯した願望。グロテスクなモチーフを用いた作品は他にもあるが、本作の場合、それをより引き立てているのは主要な登場人物たちの間で交わる愛憎、執着や嫌悪である。複雑な関係性や感情の揺れ動きからは目を離せず、いわゆるキャラ読みをする人にとっても格別な物語ではないだろうか。冒険活劇かつミステリ、耽美にしてグロテスクな一作。
読了日:07月23日 著者:江戸川 乱歩
https://i.bookmeter.com/books/558997

■山の海の日
“「ははは、なんくるないさ」現実には小山田はすぐに逮捕され、なんくるなくなかった。”の一文につい笑ってしまった。海と山、どちらか片方しかない県民の人たちはやはり憧れの感情があるのだな、と両方揃っていた県出身のわたしなどは素朴ながら思ってしまう。山だらけの県で繰り広げられる、山だらけの名前の人々の熾烈な戦い。バカバカしいくらいスケールの小さないざこざだが、平和そうでなにより。
読了日:07月22日 著者:蒲原 二郎
https://i.bookmeter.com/books/13048134

■軍靴のバルツァー 5 (BUNCH COMICS)
士官学校から選ばれた派兵される生徒は、突如始まった戦争に否応なく身を投じていく。安全な後方支援とはいえ、戦場には完全な安全など存在しない。派遣された先ではヴァイセンの指揮官が負傷し、バルツァーたちは撤退を余儀なくされる。血を好む野卑なホルベック軍に追い詰められながらもその場にあったものを駆使して戦う様は圧巻。とはいえ、そこに至るまでの犠牲は大きい。アウグストとヴァイセンの同盟は維持されるのか。
読了日:07月22日 著者:中島 三千恒
https://i.bookmeter.com/books/6871132

■デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (新潮文庫)
デイヴィッド・コパフィールドの人生を描いた自伝的小説。寡婦である母、長らく家に仕えている家政婦の三人で暮らしていた彼だが、意地悪な継父とその姉の登場で生活は激変する。デイヴィッドや家政婦の心情はさておき、幸せを掴んだはずの母親は結局泣き暮らしているし、学校では厳しい教師に支配され、と波乱万丈。ディケンズは少年を書かせると本当に巧いと、わたしは個人的に思ってるのだが、読み始めるとすぐにデイヴィッドに肩入れしたくなる。幼いながらに世界の厳しさを肌で感じつつ、そのなかでも必死に生きようと奮闘する彼が愛おしい。
読了日:07月21日 著者:チャールズ ディケンズ
https://i.bookmeter.com/books/30836

■ウインドアイ (新潮クレスト・ブックス)
短編集。不安や被害妄想ともいえるような嫌なイメージが具現化され、物語それぞれの視点人物たちの首をそっと絞める。何者かによって仕組まれた罠だったならばまだ逃げようもあるが、彼らが見舞われる不運は世界そのものの仕組みであり、誰も救い出すことのできない檻である。ギクシャクとした居心地の悪さは、「ここはお前の居場所ではないのだ」という宣告のようで、読者であるわたしは物語のなかにある情景をただ遠くから眺めていることしかできない。表題作のほか、『ダップルグリム』『食い違い』などが気に入っている。
読了日:07月20日 著者:ブライアン エヴンソン
https://i.bookmeter.com/books/11214932

■軍靴のバルツァー 4 (BUNCH COMICS)
アウグストから個人的な協力を求められたバルツァーだが、自分は国家に仕える軍人であるとしてやんわりと断る。野心家ではあっても、より多くを支配することを欲しているわけではないという点で、彼はリープクネヒトとは異なると言えるかもしれない。腹の内を探り合う会談の末、アウグストはヴァイセンに軍事的な協力をすることを承認するが、その場で戦争の報が入るのだからわかりやすいことこの上ない。若い王子は軍事国の老獪な参謀総長に上手く転がされた形になるが、巻き込まれる士官学校生の行く末が気にかかる。
読了日:07月19日 著者:中島 三千恒
https://i.bookmeter.com/books/5632901

■みどりのヒト
死刑宣告を受けた囚人が、取引によって死刑を免れることになった。条件は光合成が可能な身体に改造されること……。客観的には不幸せのように見えるが、本人にとっては幸せな終わり、いわゆるメリーバッドエンドというものだろう。日常の細々としたことから解放され、飢えや渇きに怯えることなく穏やかに時を送る。文字通り植物人間になってしまった彼は哀れを誘うが、むしろ別の次元に到達したとも考えられる。わたしもこれくらい穏やかに死ねたら良いな、と思ってしまった。
読了日:07月19日 著者:喜多 喜久
https://i.bookmeter.com/books/12884417

■ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)
各章、各エピソードは、読者(わたし)にとっては面白い。妻を追い、取り戻そうと奮闘する姿は健気で、純愛ストーリーのようでもあった。だが、主人公にとってはすべて通過点にすぎないのかもしれない。そしてその通過点すら、彼の求めるものを確実に手に入れるための手段にはならなかった。しかし、ずっと見逃していたもの、気づけずにいたことを知るきっかけにはなったのだ。こんなにページ数を割いてまでしてやることか?と言われるとそれまでだが、そのようなプロセスにこそ、主人公、あるいは著者にとって意味があるのかもしれない。
読了日:07月18日 著者:村上 春樹
https://i.bookmeter.com/books/575488

■ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)
妻の失踪から始まり、謎はますます増え、広がっていく。その時はなんということのない出来事だと思っていたけれど、後になってから「あれは意味のあることだったんだ」と気づくということは、よくある。主人公の場合それは「なんということのない」では片付けられないものだが、それでもあの時はそうするしかできなかった、けれどそのせいでなにかが変わってしまった。このどうしようもないことの積み重ねは、パッと見た印象で言えば辻褄が合わなかったりするもので、それこそが人生なのかもしれない。第3部へつづく。
読了日:07月17日 著者:村上 春樹
https://i.bookmeter.com/books/573068

■ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
ある日かかってきた一本の電話によって、主人公の日常は徐々に変化しはじめる。「10分あれば分かり合える」という、名前も実体もよくわからない女。猫を探している最中に知り合った17歳の少女。マルタで3年間修行していたという加納マルタと、妹クレタ。耳が遠い老人、本田氏。物語のなかで、さまざまな人物が自分の過去を赤裸々に語っているのが印象深い。どれも示唆に富んでいて、意味深長。特に本田老人の遺品を持ってきた、間宮中尉の語る話は壮絶だ。空っぽの箱にはどんな意味があるのだろう。第2部へ続く。
読了日:07月16日 著者:村上 春樹
https://i.bookmeter.com/books/575486

■運命の白い靴下
独り身同士が慰め合い、出会いを求めるブラックデーのお話。絶対に除隊すると心に決めていたものの、運命の女性と感じた人は職業軍人が好みらしい。青春を楽しみたいと語る彼は、除隊せずその後も軍に残るのだろうか。運命に抗うにしろ従うにしろ、どちらにも相応の苦労はあるだろうが、なんとなく彼らの人生は軽やかで楽しいものになりそうな気がする。
読了日:07月16日 著者:神家 正成
https://i.bookmeter.com/books/12833935

■ロード・エルメロイII世の事件簿 (1) (角川コミックス・エース)
第4次聖杯戦争を生き残ったウェイバーことロード・エルメロイ二世は、弟子グレイを伴って剥離城アドラへ赴く。血縁者のない城主の遺言を聞くことを依頼されたのだ。外界から遠く隔たれた場所に招待された人々、遺産相続のための謎解き。さながらクローズドサークルを舞台にしたミステリである。fate世界の魔術観も知れて面白いが、そのあたりは原作小説を読んだ方が分かりやすいのかも知れない。集められた人々は聖杯戦争よろしく争いに身を投じていくことになるのだろうか。
読了日:07月15日 著者:東 冬,TENGEN
https://i.bookmeter.com/books/12880206

■パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション (6) (角川ホラー文庫)
『パノラマ島綺譚』『石榴』の二篇収録。夢のなかでのみ赦される妄想が、もしも形にできるなら。死を装い、他人に成り代わることで力を得た男が、自らの理想を具現化する物語。パノラマ島というものを、本当に無邪気に、童心に帰って乱歩は描いたのだろう。延々と続く悪夢のような島の描写は、共鳴を覚えない読者にとっては確かに退屈に違いない。「でも好きな人には分かるでしょう」と乱歩が活字越しに語りかけてくるような気がした。わたしは共鳴しないけれど、彼の「好き」という感情はよく伝わった。殺人も最後のシーンも、残酷なのに美しい。
読了日:07月15日 著者:江戸川 乱歩
https://i.bookmeter.com/books/516982

■若い芸術家の肖像 (新潮文庫)
芸術家を志す若きスティーブンの、幼少期から20歳までの成長が描かれている。スティーブンの年齢に応じてさまざまな文体が用いられているのが興味深い。そのうえ、多種多様な創作から引用がされているらしいことを解説で知り「まだまだ読みきれていなかった」と反省した(引用符を多用しなかったのは翻訳の意図的な部分ではあるらしい)。アイルランドの政治、宗教、そして美についての哲学。思索に富んだ内容は、自伝的な小説というよりもむしろ神話を描き出したもののように感じる。解説で触れられている『ユリシーズ』もそのうち読んでみたい。
読了日:07月14日 著者:ジェイムズ ジョイス
https://i.bookmeter.com/books/519980

■すいかの匂い (新潮文庫)
夏にまつわる短編集。わたしだけかもしれないが、季節というものは時が流れればまた巡ってくるものではあるが、夏に関しては毎年「一度きりだ」という感覚がある。この短編集は、読んでいると自分のなかの夏が呼び覚まされる。眩暈のするような日差しとか、むっとするような草いきれ。耳元を掠める虫の羽音や、扇風機にあたりながら食べたそうめんの味。けれど、わたしの夏は著者の物語の鮮烈さには敵わない。傷跡のように生々しい夏がぎゅっと凝縮された一冊。表題作『すいかの匂い』、『弟』、『ジャミパン』などが気に入っている。
読了日:07月13日 著者:江國 香織
https://i.bookmeter.com/books/578311

■つくおき 週末まとめて作り置きレシピ (美人時間ブック)
つくりおきするおかずを1週間ごとの区切りで提案するレシピ本。仕事を始めるのと同時に、お弁当作りにも挑戦しようということで購入。わたしのライフスタイルでは1週間まとめてつくりおきするのではなく、前日にささっと作ってついでにお弁当に詰める、というやり方になりますが、主菜と副菜の組み合わせ方や、調味料の配分の仕方など大変参考になりました。シンプルな手順のものがほとんどで、これから自炊してみようという人にも易しい内容です。
読了日:07月13日 著者:nozomi
https://i.bookmeter.com/books/9883861

■いちばんやさしいきほんの離乳食フリージング (はじめてBOOKS―Baby&Child)
かかりつけの産婦人科で、離乳食教室に参加した際もらったもの。基本的な食材の与え方、下ごしらえ等が順序良く紹介されています。離乳食に関しては結局この本一冊だけを参考にし、あとは子育て系のホームページを見て補足、というスタイルでしたが、大体のことはカバーできました。
読了日:07月12日 著者:小池 澄子
https://i.bookmeter.com/books/7757510

■12人の蒐集家/ティーショップ (海外文学セレクション)
奇妙は普通、普通は奇妙。風変わりなものを集める蒐集家12の物語。彼らの集めるものは「爪」や「夢」、「希望」であったりとさまざま。しかも蒐集される側は、必ずと言って良いほど不運に見舞われる。なによりも不条理なのは、屍を積み上げるようにして集められたものものが、最後はなんの関心も価値もないものとして打ち捨てられてしまう。どうして?と思わず聞きたくなるが、理由がないから不条理なのだ。もしも道端で上品な紳士から「サイン」を「小説」を集めさせてくださいと言われても、断らなくてはならない。紫色のモチーフにはご用心。
読了日:07月12日 著者:ゾラン・ジヴコヴィッチ
https://i.bookmeter.com/books/9886168

■軍靴のバルツァー 3 (BUNCH COMICS)
勃発したデモの鎮圧に駆り出される士官学校の生徒たち。事実上の初陣である。まだ子供である彼らが人の命を奪うという経験をすることはさぞ辛いだろうとは思うものの、本物の戦争ともなればこれだけでは済まない。バーゼルラントを挟んだ軍事大国二国が対立する図式ができ、事は一気にきな臭くなるが、ここでもバルツァーの有能さが発揮される。軍事的な能力もさることながら、「一介の軍人には過ぎた政略眼」と評される交渉術。次から次へとやってくる難問は、むしろ彼自身の器用さが引き寄せているのかもしれない。
読了日:07月11日 著者:中島 三千恒
https://i.bookmeter.com/books/5153213

■小説 秒速5センチメートル (角川文庫)
花びらが落ちる速度は、秒速5センチメートル。旅の準備を始める航海士が星座の読み方を覚えるように、そのような知識を共有し合っていたあのころ。むかしはいろいろなことに躓きながらも、とても素直に信頼しあえていた。それなのにいつの間にか何もかもうまくいかない。心地よい関係というのは、お互いが同じ強さ、同じ深さで思い合わなくては築けない。重さが釣り合わなくてはどちらかが疲れ、関係は破綻する。分かっていてもなかなか上手くはいかないのが人生だが、気づけた彼には言ってあげたい。「もう大丈夫」。
読了日:07月11日 著者:新海 誠
https://i.bookmeter.com/books/10592819

■ホロー荘の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
館のプールの端で一人の男が血を流し、傍らではピストルを手にした女が呆然と立っていた……。ポアロシリーズのなかでもどことなく異色な本作。ポアロの登場が遅く、また彼の活躍もそれほど目立たない。しかし登場人物同士の複雑に絡まる視線や、心情の機微には興味が尽きない。クリスティの書くミステリーは、強引だったりアンフェアぎりぎりの線を狙ったりと油断のならないものが多いが、こと人間ドラマに関しては丁寧で緻密、そして深い。余韻の残るラストは秀逸。
読了日:07月10日 著者:アガサ クリスティー
https://i.bookmeter.com/books/528754

■軍靴のバルツァー 2 (BUNCH COMICS)
バーゼルラントを同盟国として軍事的に有効活用したいと目論むヴァイセンだが、軍国に従属することを良しとしないバーゼルラントの第二王子。足並みの揃わない国政により、市井ではすでに歪みが生じている。本巻ではバルツァーの過去がわずかだが描写される。バルツァーの学生時代、旧友リープクネヒトを中心にクーデターが起ころうとしているのを知り密告。その結果学友たちが次々と自決していくが、それでもどこかバルツァーは冷静だ。彼が非常時に人格を切り離せるのは訓練の成果もあるだろうが、彼自身の特質であったのかもしれない。
読了日:07月09日 著者:中島 三千恒
https://i.bookmeter.com/books/4347452

■黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション (5) (角川ホラー文庫)
美しいものを奪い、集めるためならば殺人すら厭わない、夜の女王・黒蜥蜴と明智小五郎の対決。トリックはいささかチープで「そんなに上手くいくかい」とつい言いたくなるような犯行ばかりだが、それをストーリーの面白さが凌駕する。乱歩の時代、黒蜥蜴のように女性という枠に囚われず、好きな衣服、好きな言葉遣いを選択する存在はセンセーショナルだったのではないだろうか。自由と反逆の象徴である彼女の行動は過激だが、ラストはロマンチックですらある。騙し騙され、駆け引きがエスカレートしていく二人の対決から目が離せなかった。
読了日:07月09日 著者:江戸川 乱歩
https://i.bookmeter.com/books/482899

■カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)
エピローグ。護送されるミーチャ、倒れ臥すイワン、そして新たな場所へ向かおうとするアリョーシャの姿で締めくくられている。解説を読んで、初めてこの小説が未完であることを知った。本当に惜しい。わたし自身が本編中で十分に読み取れていなかった細かな伏線、人物の複雑な心情の機微を知るにつけ、もう一度読みたいと感じ、また執筆されずに終わった「第二の小説」を読んでみたかったと思わされた。長い作品ではあるが、それ以上に深く濃い。しばらく時間を置くつもりだが、これほど再読が楽しみな作品は久しぶりだ。
読了日:07月08日 著者:ドストエフスキー
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■華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)
炎を消し止める消防士が活動していたのも、今は昔。取って代わって現れたのは本を燃やす職業、焚書官だ。有川浩の『図書館戦争』では、「本を焼く国はいずれ人を焼く」という言葉が登場するが、本作では実際、焚書官である主人公が本を守ろうとする女性をもろとも燃やしている。人が知識を得ることに制約をかけ、政府の思うまま情報を操作される社会。60年前に書かれたものとは思えないほど、将来そうなるのではないかという社会を的確に風刺している。知ることを禁じられることの恐ろしさと共に、知ることの尊さもまた再確認できた。
読了日:07月07日 著者:レイ ブラッドベリ
https://i.bookmeter.com/books/566624

■ゴーニンジャー殺人事件
てっきり五人組の戦隊なのだろうと思って読み進めていたら、最後の一文で見事にオチがついていた。文字の色がキーになっている。もう一度最初から読むと、また見え方が違って面白い。
読了日:07月07日 著者:喜多 喜久
https://i.bookmeter.com/books/12884418

■有限と微小のパン (講談社文庫)
シリーズ最終巻。真賀田四季の再登場。四季は天才である以前に、とてつもない磁力を備えた人なのだろう。犀川が彼女を女王蜂体質と評するように、わたしはファムファタル的な女性だと感じる。男女の別なく周囲の人間はいやおうなく惹きつけられ、「自分は彼女にとって特別になれる」という幻想を抱き、やがて身を滅ぼす。だが完璧で欠落のない彼女は誰にも捕らえられることなく、心の赴くままにどこへでも行く。そんな彼女の行方を、わたしも追いたいと思ってしまう。おそらく、他のシリーズも読まなくてはならないのだろう。本当に厄介な女性。
読了日:07月06日 著者:森 博嗣
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■軍靴のバルツァー 1 (BUNCH COMICS)
19世紀のプロイセンをモデルとした架空の国が舞台の軍事、歴史漫画。若く有能な将官バルツァーが、軍事後進国であるバーゼルラントに士官学校の教官として赴任する。時代遅れな装備や価値観に戸惑いながら、いまあるものを有効に使い、革命を起こそうと創意工夫するバルツァーの姿が見どころ。「銃口から政権が、砲口から国家が生まれる時代」。平和とは次の戦争のための準備期間であると断言されるが、果たして戦争に突入するまでに生徒らは一人前の兵士になれるのか。
読了日:07月05日 著者:中島 三千恒
https://i.bookmeter.com/books/3350517

■ブライト・ライツ、ビッグ・シティ (新潮文庫)
アルコールにドラッグ、セックス。80年代のニューヨークで生活する若者「きみ」の日常が軽やかに描かれている。フィッツジェラルドほど上品で洒落ているという印象はなく、泥臭く、不器用。それが本作の愛嬌のようにも感じられる。仕事や妻を失い、自分自身を見失いながら、かつて母親を亡くしたときの記憶が彼を立ち直らせる。巨大な街ではなにもかもが多すぎて、自分というものを保つことは難しいのかもしれない。今現在のニューヨークは、果たしてどのように変わっているだろうか。同じような若者が、混沌の夜を孤独に過ごしているのだろうか。
読了日:07月05日 著者:ジェイ マキナニー
https://i.bookmeter.com/books/21998

■遠い水平線 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
身元のわからない死体に興味を持ち、死体の生前を知るために旅をするスピーノ。タブッキの長編は『インド夜想曲』から続いてこちらが2作目。本作のキーワードは『存在したものは、存在しているものとも存在していないものとも異なる』というジャンケレヴィッチの引用だ。彼の描く旅はいつも夢のなかのようで、地に足がついていない。美しい風景も、肌で感じる光や温度もいずれ遠い水平線の向こうへ消えていく。物語のなかで本当に探していたものは、外界で見知ったものではなく、自分自身のなかに『存在していた』ものなのかもしれない。
読了日:07月04日 著者:アントニオ タブッキ
https://i.bookmeter.com/books/510834

■アド・アストラ 13 ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス)
ついにザマの戦い。「最初で最後の直接対決」とのモノローグに驚いた。もうずっと対決している気持ちで見ていた。物理的にぶつかり合うのはこれが初めてかもしれないが、精神的には長い年月をかけて意識しあっていた仲である二人は、戦友やライバルというもの以上に深い関係ではないだろうか。英雄として国の宝となった彼らも、時代の流れとともに忘れ去られ、国を追われて悲哀に満ちた最期を迎える。同じ時を生き、同じ時に生涯を閉じた二人は、魂の伴侶とも言える存在だったのかもしれない。最終巻まで、とても楽しく読んだ。
読了日:07月03日 著者:カガノ ミハチ
https://i.bookmeter.com/books/12652276

■アド・アストラ 12 ─スキピオとハンニバル─ (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)
読む前から口絵でなんとなく察してしまった。ローマは戦いに勝ち、ソフォニスバを奪還することに成功するが、敵の元妃である彼女の立場は危うい。進退極まり、身ごもってしまった子供を殺すように説得されるが、彼女は自死を選んだ。戦いのなかで、女が生き方を選ぶことは簡単ではない。ならばせめて死ぬ時を選ぼうと行動した彼女に、憐れみを禁じ得ない。ついにハンニバルと直接言葉を交わすスキピオ。もはや後がないと脅しをかけるが、どうやらまだなにかを隠しているらしい。果たして戦いの行方は……。
読了日:07月03日 著者:カガノ ミハチ
https://i.bookmeter.com/books/12199084

■陰獣 江戸川乱歩ベストセレクション (4) (角川ホラー文庫)
『陰獣』、『蟲』の2篇収録。『陰獣』がとても面白かった。艶かしい女からもたらされた、不気味な事件を追っていくなかで、その女と爛れた関係に陥っていく主人公だが、真相に至り、女を手放す。しかし、その真相すら本物であったのかわからない。真実は藪の中。途方に暮れるようなラストも味わい深いが、「引き裂かれた乱歩」という解説で興味深さが増す。登場人物すべてが分身であり、分裂した自分。残された手がかりを追って放浪するという終わりを迎えた物語は、乱歩の破滅願望、あるいは再生を希望する思いが昇華されたものなのだろうか。
読了日:07月02日 著者:江戸川 乱歩
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■カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)
4巻は裁判をめぐり盛り上がりを見せる。状況証拠を覆せるものもなく敗北してしまうミーチャだが、それよりもスメルジャコフの人生について考えてしまう巻だった。“神がかり”の母親とフョードルとのあいだに生まれたのではないかと言われている彼の子供時代は、さぞ惨めであっただろう。そして今に至り、子供たちに罪の意識を植え付けた上で、自ら死を選ぶ。これは復讐であり、また裁きでもあるのだろうか。エピローグではどのように物語が閉じていくのか、またミーチャはどうなってしまうのか。序盤で差し込まれた『少年たち』の役割も気になる。
読了日:07月01日 著者:ドストエフスキー
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